2012 年 73 巻 7 号 p. 1770-1773
乳糜腹水は生体肝移植ではまれな合併症であるが,一度発症すると長期に及び,重大な合併症を引き起こし得る.今回われわれは,生体肝移植後に乳糜腹水を合併した2例を経験した.症例1は55歳女性.原発生胆汁性肝硬変に対して生体肝移植を施行.術直後より3,000ml前後のドレーン排液を認めた.術後4週目より腹水に乳糜様の白濁を認めたため,絶食+total parenteral nutrition (TPN)管理となった.その後は絶食+TPN管理のみで徐々に軽快したが約9週間を要した.症例2は43歳男性.B型肝硬変に対して生体肝移植を施行.術直後のドレーン排液量は1,800ml程度であった.術後9日目より腹水に乳糜様の白濁を認めたため,絶食+TPN管理となった.その後,オクトレオチドの投与を開始したところ,約4週間で軽快した.オクトレオチドは生体肝移植後の乳糜腹水に対しても有効な治療手段であると考えられた.