日本臨床外科学会雑誌
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症例
胃切除を契機に食道カンジダ症から敗血症をきたした高齢者胃癌の1例
松下 明正藍澤 喜久雄家里 明日美熊木 俊成
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2012 年 73 巻 8 号 p. 1945-1949

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抄録

症例は83歳,男性.胃食道逆流症に対してプロトンポンプ阻害薬(PPI)を服用中に早期胃癌を発見され,腹腔鏡補助下幽門側胃切除術を受けた.術後15日目に嚥下困難をきたしたため,上部消化管内視鏡検査を行ったところ,下部食道に互いに癒合した白苔がみられ,粘膜には充血と潰瘍を伴うGrade III(Kodsiの分類)のカンジダ食道炎が認められた.ただちにMiconazoleの経口投与を開始したが,ショックを伴う発熱がみられ,血液培養ではカンジダが同定された.以後はFosfluconazoleの全身投与が14日間行われ,軽快退院となった.食道カンジダ症の発症には,細胞性免疫の低下,悪性腫瘍,糖尿病,抗生物質の投与などが関連しているが,胃酸分泌低下もその一因とされている.本症例の場合,長期投与されていたPPIと胃切除による胃酸分泌の低下と免疫低下が食道カンジダ症およびカンジダ敗血症の発症に関与した可能性が示唆された.

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© 2012 日本臨床外科学会
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