抄録
症例は44歳,男性.肛門周囲膿瘍で3回切開排膿の既往がある.前医で肛門縁の左背側に約5×3cmの腫瘤と下血を認め肛門周囲膿瘍と診断され,下部消化管内視鏡検査でS状結腸癌を認めた.当院入院時には肛門部腫瘤は約4×2cmと縮小傾向であり,腫瘤を伴う痔瘻と診断した.S状結腸切除術D3郭清,肛門部病変にcoring outを行った.術後診断でS状結腸癌はStage IIIbと診断され,原発巣と肛門部病変から中分化型腺癌を認めた.原発巣から管腔内を移動した癌細胞が痔瘻内で生着増大した可能性が示唆された.術後補助化学療法と肛門部病変への放射線治療を行い,4年9カ月再発を認めていない.転移性痔瘻癌は比較的まれであり,国内外で33例が報告されている.硬結を伴う痔瘻では組織学的診断が必要となる可能性があることと痔瘻内に癌を認めた際,原発性痔瘻癌のみでなく転移性痔瘻癌の可能性も考慮する必要があることが示唆された.