2012 年 73 巻 8 号 p. 2072-2077
症例は72歳,女性.腹部膨満感を主訴に近医を受診し,脾腫大および肝腫瘍を指摘され当科入院となった.腹部CTでは脾臓の内部は不均一に造影され,また肝内には多数の周囲が造影効果を受ける腫瘍性病変を認めた.FDG-PETでは脾臓および肝腫瘍部に一致してFDGの集積を認めた.肝転移を伴う脾原発の悪性腫瘍と診断し,脾臓摘出術および肝生検を施行した.病理組織学的検査にて血管肉腫と診断した.術後は多発肝転移巣に対して肝動脈塞栓療法(TAE)を施行することで,QOLを保ちながら約1年間の生存期間を得ることができた.脾臓原発の血管肉腫は予後不良なまれな疾患であり,本疾患に対する治療法はいまだ確立されていない.本疾患の肝転移巣に対してのTAEは,予後を改善させる可能性があると考えられた.