2013 年 74 巻 1 号 p. 129-136
症例は37歳の女性で,左側腹部の疼痛を主訴に当院を受診した.腹部CTにて,腹壁膿瘍とそれに連続した下行結腸に手拳大の腫瘤性病変を認め,下行結腸癌腹壁浸潤による腹壁膿瘍形成と診断し,同日,横行結腸双孔式人工肛門造設および腹壁膿瘍ドレナージを施行した.この時,膿と共に排出された組織片より中~高分化型腺癌が認められた.全身状態と炎症反応の改善後,Hartmann手術(D3),腹壁全層合併切除術を施行し,腫瘍を一塊に切除しえた.合併切除した約20×10cmの腹壁全層欠損部に対しては,広背筋皮弁を用いて再建した.病理組織学的検査では,下行結腸の中~高分化型腺癌,pSI,pN2,ly1,v0,RM0,fStage IIIb,癌組織は直接浸潤の形で腹壁骨格筋近縁まで認められた.腹壁欠損部に対して筋皮弁を用いた形成外科的な腹壁再建を施行することにより,腹壁膿瘍合併結腸癌の根治切除が可能になると考えられる.