2013 年 74 巻 1 号 p. 124-128
症例は26歳,女性.S状結腸癌のため2009年7月,S状結腸切除を施行したのち,化学療法中であったが,手術から16カ月後に肺転移および右卵巣転移・腹水貯留が出現した.症状緩和目的に右卵巣腫瘍摘出したが,その2カ月後,突然一過性の視野欠損や構音障害・日々変化する上下肢の疼痛などの神経症状が出現した.頭蓋内圧亢進症状および髄膜刺激症状は認めず,gadopentetate dimeglumine造影MRI(以下Gd-MRI)では脳表・軟膜に沿ったびまん性の異常増強効果を認めた.髄膜癌腫症と診断し,dexamethasoneおよびcapecitabineを投与したところ,神経症状は消失した.その後患者は3カ月症状の再燃なく生存した.大腸癌による髄膜癌腫症はまれであり,文献的考察を加えて報告した.