2013 年 74 巻 1 号 p. 142-145
症例はS状結腸癌の診断にて術前精査中の56歳の女性.突然の左下腹部痛と嘔吐を主訴に救急搬送された.腹部CT検査で逆行性の腸管陥入像をS状結腸に認めたため,S状結腸癌による逆行性腸重積症の診断で緊急手術を施行した.開腹すると腫瘍を先進部とし,S状結腸が逆行性に陥入していた.Hartmann手術を施行した.切除標本ではS状結腸に35×34mmの1型病変を認め,組織型は中分化型管状腺癌であった.逆行性腸重積症の発症機序は明らかではないが,有茎性/亜有茎性の腫瘍が移動することにより,腸管の逆蠕動運動が起こることが考えられている.自験例はS状結腸が長く腸管の固定もルーズであり,また頑固な便秘による腹圧上昇もその一因と考えられた.