日本臨床外科学会雑誌
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症例
術後早期にMRSA脊椎炎を合併した大腸癌の1例
正木 裕児淵本 定儀
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2013 年 74 巻 11 号 p. 3108-3112

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抄録

大腸癌術後MRSA脊椎炎を経験したので報告する.症例は70歳,男性.便秘,食欲低下で精査を受けS状結腸癌と診断された.3週間前に自宅庭で背部を打撲.整形外科で経過観察されていたが,受傷10日後のCT検査で第10胸椎陳旧性骨折と診断された.大腸癌手術が実施されたが術後4日目に病室でしりもちをつき背部痛が増悪,その後,下肢麻痺が出現した.化膿性脊椎炎と診断,随伴した脊椎膿瘍に対して経皮的ドレナージを実施した.膿からはMRSAが検出され膿胸や敗血症性ショックなどを併発したが,脊椎外科で経皮的胸椎後方固定術を実施しえた.しかし最終的には下肢の完全麻痺を残す結果となった.本例の感染源は不明であるが,大腸から癌病巣を介してbacterial translocationが起こり骨折部に脊椎炎を招いた可能性も指摘できよう.化膿性脊椎炎はまれではあるが,その後遺症は深刻であり早期診断と早期治療開始が重要である.

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