2013 年 74 巻 11 号 p. 3140-3144
症例は71歳,男性.近医にて多発肝嚢胞の経過観察中,肝胆道系酵素の上昇を認め,精査にて肝内胆管癌が疑われ,手術目的に当科紹介となった.腹部造影CT検査にて肝S4/5にかけて40mm大の辺縁に造影効果を伴う腫瘍性病変を認め,肝内胆管癌の診断となり,肝中央2区域切除・尾状葉切除・肝外胆管切除・胆管空腸吻合術を施行した.病理組織検査の結果,悪性末梢神経鞘腫(Malignant Peripheral Nerve Sheath Tumor:MPNST)の診断となった.術後胆汁漏を併発したが,保存的加療にて軽快し第72病日に退院となった.
MPNSTはSchwann細胞由来の悪性腫瘍であり,軟部組織悪性腫瘍の約5%を占め,中でも予後の悪い疾患の一つである.肝原発のMPNSTは非常に稀な疾患であり,術前の鑑別を含め若干の文献的考察を加え報告する.