2013 年 74 巻 12 号 p. 3277-3280
症例は73歳,男性.直腸癌にてHartmann手術を施行した.術後に吐血と急な血圧低下を認めたため,緊急上部内視鏡を施行したところ,食道中部に拍動性の動脈性出血部を確認した.内視鏡的止血術を試みるも止血困難であり,緊急血管造影検査を施行した.右気管支動脈食道枝より造影剤の漏出を認め,出血部と診断した.TAEを施行し止血を得,その後,経過良好にて退院となった.出血時の内視鏡所見では明らかな潰瘍形成は認めず,血管造影の所見から,仮性動脈瘤食道穿破と診断した.食道出血は大部分が静脈瘤による出血であり,動脈性出血の報告は稀であった.また,気管支動脈からの出血に伴う症状としては喀血をきたす場合が多く,本症例のように食道内への出血の原因となった報告は極めて稀であった.今回われわれは,稀な術後合併症に対しTAEにて救命しえた症例を経験したため若干の文献的考察を加えて報告する.