日本臨床外科学会雑誌
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症例
胆管炎と膵炎を合併した肝円索膿瘍の1例
伊藤 雅典朴 泰範河本 和幸伊藤 雅
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キーワード: 肝円索膿瘍, 胆管炎, 膵炎
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2013 年 74 巻 12 号 p. 3440-3443

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抄録

症例は82歳,女性.持続する上腹部痛にて救急外来を受診した.血液検査でCRP・WBC高値と肝胆道系酵素ならびに膵酵素上昇を認めた.CTにて肝実質の不均一な早期濃染と膵頭部周囲脂肪織濃度上昇を伴い膵炎・胆管炎を示唆する所見であった.また,肝円索腫大と周囲脂肪織濃度上昇も認めた.胆管炎・膵炎を合併した肝円索膿瘍・壊疽を疑い同日緊急開腹術を施行した.術中所見では肝円索は40mm大に腫大しており一部膿瘍形成を認めた.腹水もなく,腹膜炎の所見は認められなかったため,肝円索切除のみで手術を終了した.術直後より膵炎・胆管炎は速やかに軽快し,良好な結果であった.肝円索膿瘍・壊疽は急性腹症の範疇に入る比較的稀な疾患である.文献的には胆石などの合併報告が多く,外科的切除が望まれるとされる.今回われわれは膵炎・胆管炎を合併した肝円索膿瘍の1例を経験したので報告した.

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© 2013 日本臨床外科学会
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