日本臨床外科学会雑誌
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症例
後腹膜腔に発生し診断に苦慮した海綿状血管腫の1例
西村 健門脇 嘉彦湯浅 壮司田村 竜二岡本 貴大石堂 展宏
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2013 年 74 巻 12 号 p. 3486-3490

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抄録

症例は46歳,女性.生来健康であったが検診で腹部腫瘤を指摘され当院受診.CT検査にて十二指腸水平脚と下大静脈,右腎に囲まれる領域に腫瘤を認めた.造影CT検査にて後期相で腫瘤の濃染像は認めるが質的診断には至らず,診断的加療を考慮し切除術を施行した.腫瘍は十二指腸背側で5cmほどの大きさがあり肉眼的に血管腫を疑わせた.腫瘍の栄養血管は右卵巣動脈の分岐と思われ,腫瘍を貫通していた血管を合併切除し腫瘍を摘出した.病理組織学的検査にて腫瘍は海綿状血管腫であり,血管内に器質化した血栓を認める所見であった.後腹膜の海綿状血管腫は他の部位のものと異なり乏血性を反映した所見を呈することが多く,またその頻度の少なさから診断に苦慮することが多い.本邦でもほとんどの症例で術前診断が確定しないまま手術を施行していた.血流に乏しい後腹膜腫瘍の鑑別には海綿状血管腫も考慮すべきであると考えられ,若干の文献的考察を加え報告する.

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© 2013 日本臨床外科学会
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