日本臨床外科学会雑誌
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症例
下腸間膜静脈腫瘍塞栓を伴った左側多発大腸癌の1例
松田 真輝志田 大真栄城 剛宮本 幸雄井上 暁梅北 信孝
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2013 年 74 巻 2 号 p. 467-472

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抄録

大腸癌の進展様式として腸間膜静脈内に腫瘍塞栓を形成することはまれである.今回,下腸間膜静脈(IMV)内に腫瘍塞栓を形成した左側多発大腸癌を経験したので報告する.症例は64歳男性.頻回の下痢による低K性ミオパチー,横紋筋融解症をきたし当院入院.下部内視鏡検査で上部直腸癌と診断した.CTでは,S状結腸から直腸にかけて著明な腸管浮腫像あり,またTreitz靱帯付近までIMVの閉塞を認めた.以上よりIMV腫瘍塞栓を伴う直腸癌との術前診断で,低位前方切除術を行った.開腹所見では,S状結腸から直腸はNeck Pillow状に硬化・固定されていた.切除標本では上部直腸およびS状結腸にそれぞれ4型病変があり,SE(Ra)およびSS(S/C),N2 (7/30)で,fStage IIIbであった.IMVは約15cmにわたり腫瘍栓を認め,一部静脈壁に癌が浸潤していた.術後3年4カ月の現在,無再発生存中である.

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© 2013 日本臨床外科学会
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