日本臨床外科学会雑誌
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症例
10年間の経過観察後に切除した膵粘液性嚢胞腺腫の1例
砂原 正男小林 清二小笠原 和宏草野 満夫
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2013 年 74 巻 4 号 p. 1029-1034

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抄録

患者は74歳,女性.64歳時から径4cm大の膵尾部嚢胞性腫瘍にて外来で経過観察していた.当初,腫瘍径の増大は緩徐であった.4年後のERPにて主膵管と嚢胞の交通を認めた.4年4カ月後に急性膵炎を発症し,その3カ月後に腫瘍は7cm大に増大していた.初診から約10年後に心窩部つかえ感が出現し,精査にて腫瘍は11cm大に増大していた.ERPでは主膵管と嚢胞の交通は消失していた.膵粘液性嚢胞腫瘍を疑い,膵体尾部脾切除を施行した.腫瘍は厚い線維性被膜を有する嚢胞性病変で,卵巣様間質を一部に認め,粘液性嚢胞腺腫と診断された.膵粘液性嚢胞腫瘍はmalignant potentialを有すること,悪性例では予後不良で,術前の良悪性の鑑別診断は困難であることなどから切除が推奨されている.膵粘液性嚢胞腫瘍に対し長期間の経過観察をした後に切除した1例を経験したので,その自然史解明の一助になると考え,文献的考察を加えて報告する.

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© 2013 日本臨床外科学会
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