2013 年 74 巻 4 号 p. 1041-1046
悪性腫瘍の膵転移は予後不良との報告があるが,膵切除後の長期生存例も報告されている.大腸癌術後に肝細胞癌を発症し,その後,転移性膵癌を指摘され尾側膵切除術を行った症例を経験したので報告する.症例は75歳女性で,S状結腸癌術後5年目にCTで膵尾部に造影効果を示さない単発の腫瘤が指摘された.膵腫瘤の辺縁は比較的明瞭で,周囲への浸潤はなかった.MRCPで主膵管の途絶や尾側膵管の拡張はなく,膵原発より転移性膵腫瘍が疑われた.尾側膵切除および脾合併切除術を行い,大腸癌膵転移であった.術後10カ月目に多発肺転移が認められたが,化学療法を行っており術後25カ月現在生存中である.悪性腫瘍膵転移の予後は原発巣によるところが大きいと考えられるが,大腸癌膵転移切除症例はまだ報告数が少ないものの比較的長期生存例も報告されている.耐術能があり他臓器に切除不能病変がなければ,膵切除術は十分考慮されるべきものと考えられる.