日本臨床外科学会雑誌
Online ISSN : 1882-5133
Print ISSN : 1345-2843
ISSN-L : 1345-2843
症例
自然消退を認めた乳房内結節性筋膜炎の1例
柏木 伸一郎高島 勉野田 諭川尻 成美小野田 尚佳若狭 研一平川 弘聖
著者情報
ジャーナル フリー

2013 年 74 巻 5 号 p. 1183-1186

詳細
抄録

結節性筋膜炎は線維芽細胞の反応性増殖性病変であり,四肢,特に前腕に好発する疾患である.乳房および胸壁に発生する例は稀であるとされている.今回われわれは無治療で自然消退を認めた乳房内の結節性筋膜炎の1例を経験した.74歳の女性が左乳房腫瘤を自覚し当院を受診,左乳房の上外側域に約3cm大の腫瘤を触知した.超音波検査で左乳腺C領域に約3.6cm大の境界不明瞭な低エコー腫瘤を認め,同部位の針生検にて結節性筋膜炎が強く疑われた.しかしながら悪性腫瘍との鑑別が困難であり,確定診断目的にて摘出生検を要するものと考えられた.約1週間後の生検当日,腫瘍は消失しており自然消退が認められた.結節性筋膜炎の治療は診断的意義においても腫瘤摘出術が標準であるとされているが,自験例のように自然消退する症例も存在するため,手術適応には十分な配慮が必要であることが示唆された.

著者関連情報
© 2013 日本臨床外科学会
前の記事 次の記事
feedback
Top