2013 年 74 巻 6 号 p. 1458-1461
症例は31歳,女性.妊娠31週目に胸痛および背部痛を自覚し,近医に緊急搬送された.造影CTにて急性A型大動脈解離と診断され,当院に手術目的に緊急搬送された.搬入時,患者の血行動態が安定していたため,帝王切開を先行させ,胎児を娩出後に人工血管置換術を一期的に行うこととした.また,人工血管置換術中の産科的出血を予防するために子宮全摘術を予定した.手術は帝王切開にて胎児を娩出し,引き続き産婦人科医により子宮全摘術を行った後,心臓血管外科医によって人工心肺を用いて上行大動脈人工血管置換術を施行した.術後経過は良好で出血などの合併症もなく,母子ともに術後24日目に自宅退院した.