2013 年 74 巻 6 号 p. 1573-1578
症例は79歳,女性.腹痛,嘔吐を主訴に救急外来を受診した.CTで回腸に壁肥厚とそれより口側小腸の拡張を認め,回腸腫瘍とそれによる腸閉塞が疑われた.各種検査を行ったが,確定診断には至らなかった.腫瘍は腸閉塞の原因と考えられ,また確定診断を行うため,腹腔鏡下手術を選択した.回腸腫瘍部と近傍の腸間膜リンパ節腫大以外に異常所見は認めず,腫大した腸間膜リンパ節を含めて回腸を部分切除した.術前検査,術中所見と病理組織検査の結果より,回腸が原発の腸管型T細胞リンパ腫と診断した.周囲の腸間膜リンパ節に転移は認めず,治癒切除が得られたと考え,術後化学療法は施行せずに再発兆候無く経過している.極めてまれな消化管原発のT細胞リンパ腫に対して腹腔鏡下手術を施行し良好な経過を得た1例を経験したので報告する.