2013 年 74 巻 6 号 p. 1650-1654
症例は52歳,男性.突然の腹痛を主訴に救急搬送された.外傷の既往はなく,搬送時全身状態は安定していた.腹部造影CT検査で肝左葉外側区域に7cm大の高吸収域な腫瘤性病変と,造影剤の血管外漏出,血腫形成を認め,肝血管腫の破裂による腹腔内出血と診断した.腹部血管造影を施行し左肝動脈,左胃動脈分枝より血管外漏出を認めたため,transcatheter arterial embolization (TAE)を施行し止血を行った.貧血が進行すること,再破裂・膿瘍形成の可能性も考慮し入院後21病日に肝外側区域切除術を施行した.病理学的検査で海綿状血管腫の破綻出血に矛盾しない所見であった.術後経過良好で術後13病日に退院となった.肝血管腫の破裂は極めてまれであるが,破裂後の死亡率は3%と報告されている.破裂症例に対してはTAEによって可及的に止血を得た後に,肝切除を行うなどの治療が適切だと考えられる.