抄録
虫垂切除後の縫合糸による異物性肉芽腫の1例を経験した.症例は38歳,男性.前医で急性虫垂炎の診断で開腹虫垂切除術を受けた.術後10カ月目に血便が出現し,下部消化管内視鏡検査で盲腸に粘膜下腫瘍を指摘され,当院を紹介された.当院の内視鏡検査では盲腸に15mm大の粘膜下腫瘤を認めた.生検では中等度の炎症性変化のみで,炎症性腫瘤の診断で経過観察とした.6カ月後に再検すると,腫瘤は18mmに増大し,分葉状を呈していた.このため,腫瘍性病変と診断し,腹腔鏡補助下回盲部切除術を施行した.切除標本では盲腸に20×15mmの隆起性病変を認めたが,病理組織学的には虫垂断端の縫合糸周囲に発生した異物性肉芽腫であった.なお,前医の手術記録から虫垂根部は絹糸で結紮し,断端を埋没したことを確認した.盲腸の粘膜下腫瘍の鑑別診断として虫垂切除術の既往がある場合は異物性肉芽腫も考慮に入れるべきと考える.