抄録
症例は65歳の女性で,膵頭部癌に対して術前化学放射線療法後に門脈-上腸間膜静脈合併切除を伴う亜全胃温存膵頭十二指腸切除術を施行した.術中脾静脈・下腸間膜静脈を切離し,さらに左胃静脈を切離した直後から著明な胃全体の鬱血を認めた.左側門脈系の停滞が原因と考え,右胃大網静脈-下腸間膜静脈端側吻合を施行したところ,胃の鬱血は直ちに改善した.術後5日目の造影CTでは,右胃大網静脈→吻合部→下腸間膜静脈→左結腸静脈→中結腸辺縁静脈→中結腸静脈へと流れる側副血行路の発達を認めた.術後は胃排泄遅延等なく退院し,その後も消化管出血等の症状を認めていない.門脈-上腸間膜静脈合併切除時の著明な胃の鬱血に対し,右胃大網静脈-下腸間膜静脈吻合が効果的と考えられた症例を経験したので報告する.