抄録
脂肪肉腫は軟部組織腫瘍の中で9.8~16%を占め,軟部組織腫瘍の中では比較的頻度の高い悪性腫瘍である.好発部位は大腿部,後腹膜で鼠径部は比較的稀とされている.
症例は80歳台男性.平成19年2月に当科で直腸癌に対して手術を施行したが再発は認めていない.平成24年2月頃より左鼠径部の膨隆を自覚された.以前に両側の鼠径ヘルニア,さらに左再発鼠径ヘルニアと左睾丸炎に対する手術既往があった.理学的所見にて左再々発鼠径ヘルニアを疑い,同年4月に手術を施行した.手術所見ではヘルニア嚢は認めず,左鼠径部に軟部腫瘍を認め全摘除した.病理組織学的検査にて粘液型脂肪肉腫と診断された.全身精査でも他部位に明らかな病変は認めず,左鼠径部原発の脂肪肉腫と診断した.1年後の現在まで再発を認めていない.
上記,術前再々発鼠径ヘルニアとの鑑別が困難であった鼠径部脂肪肉腫の1例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する.