抄録
症例は70歳,女性.右鼠径部腫瘤,疼痛を主訴に近医受診,右鼠径ヘルニア嵌頓疑いにて当院紹介.右鼠径靱帯下方に約3cm大の腫瘤を認め,骨盤 CT検査にて右大腿ヘルニア嵌頓と診断,同日緊急手術を施行した.術中所見としては,右大腿ヘルニア内に嵌頓,壊死に陥った虫垂を認めた.同一創にて虫垂切除術とヘルニア根治術を施行し,ヘルニア根治術はMcVay法にて行った.大腿ヘルニアの虫垂嵌頓は非常にまれである.本邦の症例報告を検討したところ,個々の状況に応じた術式が選択・施行されているが,人工膜使用群においてmesh感染等の重大な合併症の報告はなかった.現在では成人鼠径部ヘルニアに対して容易にtension free repairでの手技を行っているが,種々の理由でtension free repairが施行できない場合でも,従来法による術式を選択・施行できる解剖学的知識を身につけておくことが必要と考えた.