2013 年 74 巻 9 号 p. 2380-2388
診断に苦慮した巨大腋窩腫瘍の1症例を経験したので報告する.症例は51歳,女性.腫瘍表面に潰瘍を形成し出血を伴う腋窩腫瘍を認めた.乳癌の腋窩リンパ節転移を第一に考え,触診,各種画像検査にて乳房内を検索したが腫瘤を認めず,腋窩原発の腫瘍を次に疑った.パンチ生検では低分化腺癌の所見であった.手術は腫瘍切除と腋窩リンパ節郭清を施行した.摘出標本内に正常乳腺およびリンパ節構造を認めず,切除断端,リンパ節転移はともに陰性だった.各種免疫組織化学染色にて乳癌の確定診断となった.最大径が10cmを超える腋窩腫瘍でありながら,同側腋窩リンパ節転移を伴わず,また,大きな皮膚潰瘍を伴う本症例は,潜在性乳癌よりはむしろ異所性乳癌と診断するのが妥当と考えられた.術後補助療法としてアナストロゾールとテガフール・ウラシル配合薬(UFT)を内服し,現在厳重経過観察中である.