2013 年 74 巻 9 号 p. 2412-2416
症例は93歳,女性.主訴は嘔気,背部痛.CTで横隔膜レベルに最大径6.5cmのCrawford V型の胸腹部大動脈瘤とその周囲に血腫を認めた.高齢かつHb 5.7と著しい貧血を認めた.人工心肺を用いる開胸開腹手術では救命困難と判断しステントグラフト治療を行う方針とした.全身麻酔下に開腹し腹腔動脈,上腸間膜動脈に左外腸骨動脈からバイパスし,右総腸骨動脈にタバコ縫合をかけてシースを挿入.破裂孔を覆うようにステントグラフト内挿した.術後7日目のCT,腹部超音波でエンドリークを疑う血流なく,バイパスの開存を確認した.術後15日目に退院となった.高齢かつ胸腹部大動脈瘤の破裂というハイリスク患者において腹部分枝再建,ステントグラフト内挿術を施行し良好な結果が得られたので報告する.