2013 年 74 巻 9 号 p. 2497-2501
症例は65歳,男性.潰瘍性大腸炎のために大腸全摘・回腸人工肛門造設状態であり,肺癌stage IV(脳・肝・骨転移)の化学療法目的に当院に通院中であった.起床時から腹痛・人工肛門の脱出があり外来を受診した.肉眼的所見と腹部CTの結果,脱出腸管の浮腫・虚血性変化が強いために整復は困難と判断し,緊急手術となった.全身麻酔下に詳細に観察すると回腸が重積して人工肛門から脱出していた.重積した回腸を正常部分まで体外へと導出した後用手的に重積を解除してから壊死腸管を切除し,人工肛門を再造設して手術を終了した.回腸人工肛門からの回腸の重積脱出は非常にまれで原因が明らかではないが,腹圧の上昇や腹腔内経路による人工肛門造設に加えて,肺癌脊髄転移による腸管蠕動異常が生じたことが原因になり得ると考えられた.