日本臨床外科学会雑誌
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症例
経肛門的イレウス管留置が原因と考えられた同時性多発大腸癌腸重積の1例
土田 智一足立 武則原 信寿鹿島 康薫早乙女 勇廣田 紀男
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2013 年 74 巻 9 号 p. 2546-2550

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抄録

59歳,男性.便秘,下腹部痛を主訴に外来受診.腹部X線写真で全結腸の拡張,腹部CTでS状結腸壁肥厚と口側腸管の拡張を認めた.大腸内視鏡検査でS状結腸内腔を占める腫瘍を認め,経肛門的イレウス管を挿入した.減圧,洗浄を行い,再度造影CTを施行したところS状結腸腫瘍のほか横行結腸内腔を占める腫瘍,多発肝転移が確認された.翌日注腸検査を行うと下行結腸にカニ爪状陰影が見られた.横行結腸腫瘍による腸重積と考え,圧を加え重積を解除した.挿入後7日目にHartmann手術,横行結腸部分切除術を行った.経肛門的イレウス管は待機手術を可能にするだけでなく,狭窄より口側の大腸検索にも有用である.合併症として出血,穿孔,潰瘍形成などが報告されているが,今回われわれは経肛門的イレウス管留置が原因と考えられた腸重積を経験した.多発大腸癌はまれな病態ではなく,イレウス管留置の際には合併症の1つとして留意する必要があると考えられた.

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