抄録
症例は既往歴の無い36歳,男性.受診数日前より全身倦怠感を自覚しており,腹痛も出現したため当院へ救急搬送された.腹部は膨満し血液検査で貧血を認めた.腹部CTでは肝に内部均一な腫瘍が多発し,病変の一部から造影剤の血管外漏出を認めた.緊急TAEで止血したが,その後,別の部位からも出血し再度TAEを行った.しかし,翌日に血圧と意識状態の急な低下を認めたため緊急手術となった.肝の複数箇所が破裂し手術は難渋したが,ガーゼパッキングにより一時的に止血を得られた.Second-look手術でも止血しておりガーゼを除去したが,翌日に再出血し状態が悪化した.ご家族よりこれ以上の積極的治療を望まない旨の希望があり,保存的治療を継続したが,患者は初回手術後第5日に死亡した.多発肝細胞癌複数破裂は治療に苦慮する病態であり,また若年者の非B非C型肝細胞癌はまれである.今回,若干の文献的考察を加え報告する.