抄録
症例は82歳,女性.非アルコール性脂肪肝炎,糖尿病の加療中に肝S4/8,径5cmの肝腫瘤を指摘された.術前検査ではリンパ節,遠隔転移を認めず,腹腔鏡下に胆嚢摘出術,肝右葉授動の後,小開腹下にS4+前腹側区域の肝切除術を行った.病理結果は中~低分化型肝細胞癌成分と低分化型胆管癌成分が混在する混合型肝癌であり,切除断端は陰性であった.術後第26病日に呼吸苦が出現し,低酸素血症と両肺野の広範なスリガラス陰影の出現を認めた.急性呼吸性窮迫症候群と判断し集学的治療を開始したが,42日後死亡した.死後の肺生検にて胆管癌に類似した腺管構造を有する腫瘍細胞の増殖と繊維化を認め,癌性リンパ管症と診断した.術後早期に癌性リンパ管症を発症した原因として,悪性度の高い胆管癌成分を有していたことに加え高齢や肝切離面積が比較的広範囲となり手術侵襲が増大したことにより腫瘍の形成・転移能が促進された可能性も推測された.