2014 年 75 巻 12 号 p. 3265-3270
症例は58歳,女性.検診の上部消化管造影で胃壁の異常を指摘され,前医での上部内視鏡検査で胃悪性リンパ腫を疑われ当科紹介受診となった.当院での上部消化管内視鏡検査では,胃体部後壁にびらんを伴う広範囲な陥凹性病変を認めた.生検結果は,diffuse large B-cell lymphoma (DLBCL)であった.前医での血中Helicobacter pylori (以下HP)抗体が陽性であったため除菌療法を行った.除菌治療後の上部内視鏡検査ではびらんは消失し,褪色調の粘膜面のみとなっていたが,分水嶺付近の生検から腺癌が検出された.胃悪性リンパ腫と胃癌の併存と診断し,腹腔鏡補助下胃全摘術を施行した.切除検体の病理組織検査では,早期の管状腺癌を認めたが,DLBCLは病理学的寛解であった.本症例はDLBCLと早期胃癌の併存で,手術検体からDLBCLへの除菌治療効果を病理学的に確認できた非常に稀な症例であった.