日本臨床外科学会雑誌
Online ISSN : 1882-5133
Print ISSN : 1345-2843
ISSN-L : 1345-2843
症例
消化管外アニサキス症による絞扼性イレウスの1例
釜田 茂幸藤田 昌久新田 宙石川 文彦伊藤 博
著者情報
ジャーナル フリー

2014 年 75 巻 12 号 p. 3284-3288

詳細
抄録

症例は24歳の女性で,既往は特になく,前日より出現した腹痛と嘔気を主訴に当科外来へ紹介となった.腹部CT検査では右下腹部の小腸に高度の狭窄を認め,絞扼性イレウスの診断で緊急手術を施行した.回腸末端から約90cmの小腸壁外と回盲部を繋ぐ索状物を認め,そのループをくぐった小腸が捻転して絞扼されていた.索状物を切除して腸閉塞を解除し,小腸部分切除を施行した.術後経過は良好で,術後11日目に退院した.病理組織学的所見では,腸管外索状物に壊死を伴った好酸球性肉芽腫があり,その中央には変性に陥った線虫と思われる構造が観察され,臨床病理学的にアニサキス症と診断された.陳旧性の消化管外アニサキス症が原因となり,炎症性の癒着を形成して絞扼性イレウスを発症したものと考えた.開腹手術歴がない原因不明のイレウスの場合に,消化管外アニサキス症も鑑別疾患の一つとして検討する必要があると思われる.

著者関連情報
© 2014 日本臨床外科学会
前の記事 次の記事
feedback
Top