抄録
症例は81歳の女性.右下腹部痛を主訴に近医受診.急性虫垂炎疑いにて当科紹介となった.身体所見では右下腹部を中心に筋性防御を認めた.腹部CTで虫垂の腫大と回盲部脂肪織濃度の上昇・周囲の液体貯留を認め,穿孔性虫垂炎の術前診断で緊急手術を施行した.開腹すると腹腔内に混濁した膿性腹水を認めた.虫垂は高度に腫大しており,壁の一部が憩室様に膨隆し,その1箇所が穿孔していた.炎症は虫垂根部から盲腸壁に波及しており,自動縫合器にて盲腸部分切除を行い虫垂切除術を行った.術後の肉眼標本では三つの虫垂憩室を認め,近位部の1箇所が穿孔していた.病理組織標本では内腔先端にポリープ様の隆起性病変を認め,腺腫内癌と診断された.現在,追加切除・術後補助化学療法は行わず外来で経過観察中だが,再発の兆候はない.虫垂炎に起因した虫垂憩室穿孔と虫垂腺腫内癌併存の1例を経験したため,若干の文献的考察を加え報告する.