日本臨床外科学会雑誌
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症例
重症再生不良性貧血を伴った上行結腸癌の1例
三代 雅明水島 恒和山田 萌山本 浩文土岐 祐一郎森 正樹
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2014 年 75 巻 2 号 p. 489-493

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抄録

症例は68歳,女性.貧血の精査目的で大腸内視鏡検査を施行し,上行結腸に狭窄を伴う進行癌を認めた.手術予定であったが,術前に汎血球減少が出現し,精査の結果再生不良性貧血と診断された.前医での手術は困難と判断され,当院紹介となった.入院時に白血球1,010/μl,Hb6.0g/dl,血小板8.0万/μlと著明な汎血球減少を認めたが,再生不良性貧血の治療には長期間を要し,その間に上行結腸癌による合併症を生じれば致死的となると考えられた.腹腔鏡下右半結腸切除術・回腸瘻造設術を施行し,術後は合併症を併発することなく血液内科へ転科した.再生不良性貧血の患者の手術では貧血・出血傾向・易感染性すべてが問題となるが,周術期管理についての報告はほとんどない.今回可能な限り感染リスクを減らすため手術は腹腔鏡下で行い,ポート創を利用して回腸瘻を造設するなどの工夫の結果,良好な結果を得たので文献的考察を含めて報告する.

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