2014 年 75 巻 3 号 p. 692-695
症例は83歳,女性.発熱・下痢・腹部膨満を主訴に来院.腹部単純X線検査で多量の腹腔内遊離ガスを認め消化管穿孔が疑われたが,腹部CT検査で腸管壁内ガスを認め,腹水はなく腸管嚢胞様気腫症(pneumatosis cystoides intestinalis:PCI)と診断した.腹膜刺激症状を伴わないことから保存的治療を選択し,絶食,補液で経過観察をしていたが,第6病日の腹部CT検査で腸管壁内ガスおよび腹腔内遊離ガスの改善は認めなかった.さらに経過を見るも症状は改善せず,第19病日に高圧酸素療法を開始したところ腹部膨満は改善し,第26病日の腹部CT検査で腸管壁内ガスおよび腹腔内遊離ガスは消失した.PCIには高圧酸素療法が有効であることが報告されているが,今回,腹膜刺激症状を伴わない本疾患症例において外科的治療は行わず,高圧酸素療法が著効をみた1例を経験した.