2014 年 75 巻 3 号 p. 782-786
症例は65歳,男性.直腸癌に対し腹腔鏡補助下低位前方切除術,D3リンパ節郭清を施行された.病理診断は高分化型腺癌,深達度ss,リンパ節転移は陰性であった.術後縫合不全にて汎発性腹膜炎となり,横行結腸人工肛門造設術を施行された.術後5カ月目に施行されたCTで,肝S5に径25mm大の腫瘤が認められ,直腸癌肝転移の診断で当科紹介となり,肝S5切除術・人工肛門閉鎖術を施行された.切除標本には径19×18mm大の境界明瞭な充実性の腫瘤を認めたが,病理組織検査では悪性所見を認めず,中心部膿瘍壊死を伴った肉芽腫が複数集簇した結節病変であった.グルコット染色にて真菌胞子様の小型球形構造を認め,真菌感染が疑われた.初回手術時には肝腫瘤は認められず,直腸癌術後縫合不全,汎発性腹膜炎を契機に発症したと考えられた.