2014 年 75 巻 3 号 p. 826-829
症例は60歳の男性.10日前より徐々に増強する腹痛に対して精査を行ったところ,腹部CT検査にて魚骨による横行結腸穿通・大網膿瘍と診断した.腹腔鏡下に大網部分切除術を行い,病理組織診断にて放線菌症と診断した.術後は1カ月間のpenicillin G投与により術後19カ月間再然なく経過している.
魚骨による消化管穿孔・穿通は,体腔内に急激に炎症が波及する急性炎症型と,徐々に炎症所見が発現する慢性炎症型に分類される.われわれは放線菌による慢性炎症型の経過をたどる症例を経験したが,放線菌症とは膿瘍や瘻孔を形成する慢性化膿性炎症を引き起こす疾患である.文献的考察により魚骨穿孔・穿通の発症形式の違いについて,起因菌が関与していると考えられた.また,抗菌薬の投与期間・腹腔鏡手術の有用性についても考察を加えて報告する.