2014 年 75 巻 3 号 p. 855-860
嵌頓大腿ヘルニアに対する腹腔鏡下修復術はまだcontroversialであり,報告も稀である.今回,われわれは嵌頓大腿ヘルニアに対し,腹腔鏡下ヘルニア修復術を施行した2例を経験したので報告する.症例1は77歳の女性で2日前より腹痛と嘔気が出現したため,当院救急外来を受診された.精査の結果,左嵌頓大腿ヘルニアの診断となり,発症後2日経過していたため緊急手術の方針とし,腹腔鏡下に還納し大腿ヘルニアを修復した.還納腸管の色調の改善が確認でき,腸切除は不要であった.症例2は76歳の男性で,右鼠径部の膨隆と疼痛を主訴に当院救急外来を受診.精査の結果,右嵌頓大腿ヘルニアの診断となり,整復不能であったため腹腔鏡下手術を施行した.還納腸管は軽度のうっ血を認めるのみであった.嵌頓大腿ヘルニアに対する腹腔鏡下手術は腸管のviabilityが確認できるなど有用な方法と考えられた.