2014 年 75 巻 4 号 p. 992-997
症例は75歳,男性.腹痛・下痢・血便にて当院救急外来を受診した.高血糖以外に異常な検査所見はなく,CTでは門脈内ガスがみられ,上行結腸・横行結腸の造影不良な壁肥厚とともに静脈内ガスがみられた.結腸壊死の疑いにて入院し,翌日CTで結腸壁の浮腫状変化は強まり,腹水が出現したため腸管穿孔を危惧し,緊急手術を行った.腹水とともに上行結腸の浮腫状変化を認め,右半結腸切除を行った.病理診断は気腫を伴った虚血性大腸炎であった.経過良好で術後12日目に退院した.退院後2週間目に下痢・腹痛にて再来院し,CTにて門脈内ガスが再出現,横行結腸の壁は造影効果が乏しく一部菲薄化し,その腹側大網内にガスの貯留を認め,結腸穿孔を疑われ再入院した.保存的治療にて改善を認め17日目に退院した.門脈ガス血症は予後不良な病態とされるが,ある種の腸管虚血に起因する場合,慎重な保存的治療で治癒可能な病態であると考えられる.