2014 年 75 巻 5 号 p. 1381-1385
症例は43歳,男性,交通事故で腹部を強打し当院救急外来に搬送された.造影CTで肝実質への造影剤漏出像を認め,活動性の出血を確認した.その他の腹腔内臓器に損傷や,胸腔内に異常所見は認めなかった.外傷性肝損傷(IIIb型)と診断し,輸液でバイタルサインが安定していたことから,肝動脈塞栓術を施行.これより,出血はコントロールされ状態は安定していた.しかし,経口摂取開始後より,腹水の増加による腹部膨満,炎症反応の悪化を認めた.腹水穿刺にて胆汁混じりの混濁した腹水を認め,遅発性の胆汁性腹膜炎と考えられた.塞栓術後47日目に肝切除,腹腔ドレナージを行った.術後経過は良好で,術後34日目退院となった.IVRの進歩に伴って外傷性肝損傷に対して肝動脈塞栓術を行う機会が多くなったが,急性期出血に対する止血により救命しえても,胆管損傷による遅発性の胆汁性腹膜炎の存在も留意すべきと考えられた.