2014 年 75 巻 5 号 p. 1386-1391
胆嚢・総胆管・拡張胆管内結石症を契機に発見された,膵内胆管の憩室型胆道拡張症に対して,手術を施行した1例を報告する.
症例は68歳,男性.全身倦怠感・右季肋部痛を自覚し,血液検査で肝胆道系酵素値の上昇を指摘され,精査の結果,胆嚢・総胆管・拡張胆管内結石症を伴った膵内胆管の憩室型(戸谷分類II型)胆道拡張症と診断し,憩室を含めた拡張胆管切除術・胆嚢摘出術を施行した.術後経過は良好で,これまでに術後発癌や胆道再建に伴う合併症を認めていない.
憩室型胆道拡張症は非常に稀な疾患で,治療法として憩室を含む胆管切除が推奨されているが,膵内憩室切除の報告例は極めて少ない.今回われわれは,バイポーラ・フォーセプスを用いた繊細な膵内胆管剥離に加え,拡張胆管を開放し内腔を確認することで,膵内胆管を膵管合流部まで確実に剥離同定することが可能となり,膵内憩室を安全に切除しえた.