2014 年 75 巻 6 号 p. 1636-1641
症例は87歳,男性.腹部膨満を主訴に他院を受診し,S状結腸癌イレウスと診断されself-expandable metallic stent(SEMS)を留置された.4日後に左下腹部痛が出現したため救急要請し,同院にて消化管穿孔と診断され手術目的で当院紹介となった.同日緊急手術となり,SEMSの口側端に接した腸管に穿孔を認め,S状結腸切除・吻合術と横行結腸に人工肛門造設術を施行した.術後経過は良好だったが,術後64日目に既往の心筋梗塞が悪化し,心不全のため死亡した.
大腸癌狭窄に対するSEMS療法は2012年から本邦でも保険適応となり,標準治療の一つとして急速に認識されてきた.しかし,SEMS留置は必ずしも安全な手技ではないため,目的に合わせて経肛門的イレウスチューブと使い分けることが肝要であると考えられた.