抄録
症例は63歳の女性で,会陰部不快感を主訴に前医を受診した.精査にて下部直腸癌,膣浸潤と診断され,当院での治療を希望し来院した.直腸診では肛門縁より1.5cm口側に左側前壁を中心とした半周性の易出血性の2型腫瘤を触知し,内診では膣前庭部に2cm大の隆起性病変を認めた.直腸および膣の両病変から生検を施行し,腺癌の診断であった.直腸診,内診およびCT/MRI所見では直腸と膣の病変には連続性は認めず,膣病変は直腸癌の孤立性膣転移と診断した.腹会陰式直腸切断術,膣部分切除術,左側方リンパ節郭清術を施行した.術後補助療法として骨盤腔に60Gyの放射線療法を行い,術後4年を経過し無再発生存中である.大腸癌の孤立性膣転移の報告はまれであり,その臨床病理学的特徴について文献的考察を加えて報告する.