2014 年 75 巻 6 号 p. 1712-1716
症例は57歳,男性.全身性エリテマトーデス(systemic lupus erythematosus:SLE)に対し内服加療中であった.2007年頃より腹水による腹部膨満感を訴えるようになり,また2011年12月以降,イレウス症状を反復し,次第に食事摂取困難となった.外科的治療の適応と判断し,2013年2月,手術目的に当科入院となった.身体所見ではBMI 17.9とるい痩を認め,臍下にmass様の腸管を触知した.腹部CT画像では多量の腹水と,偏在し浮腫性変化を伴う小腸を認め,被嚢性腹膜硬化症(encapsulated peritoneal sclerosis:EPS)と診断し手術となった.腹腔鏡を挿入し腹腔内を観察したところ,腹膜は肥厚し一部白色調で,壁側から臓側へ腹腔全体を覆っていた.開腹手術へ移行し,肥厚した膜様組織を剥離・除去を行った.膜様組織の下にはほぼ正常な,浮腫のない小腸が存在した.術後の経過は比較的良好で,創部感染を認めたものの,保存的加療にて軽快した.