抄録
症例は70歳,女性.主訴は右鼠径部膨隆.1カ月前より主訴を自覚し右大腿ヘルニアの疑いで当科紹介.来院時,右鼠径靱帯の足側,大腿動脈の内側に30×25mmの弾性軟な腫瘤を触知し同部位に軽度圧痛を認めた.腹部造影CT検査上,右大腿管内に虫垂の陥入が疑われ,de Garengeot herniaと診断した.全身状態より緊急性は無く,待期的に手術を施行.ヘルニア嚢を開放すると少量の漿液性腹水と共に発赤・腫脹を伴わない虫垂先端・虫垂間膜が確認された.虫垂間膜とヘルニア嚢の癒着を剥離し腹腔内に還納した.創汚染は無いと考え,PHS法を用いヘルニアを修復し手術を終了した.
大腿ヘルニア内虫垂嵌頓は鼠径部ヘルニアの約0.5%とまれである.また,術前診断が非常に困難とされる.自験例では画像診断により術前診断が可能であった.また,治療は虫垂切除を施行しなかったためmeshを用いることができ,術後経過も良好であった.