抄録
症例は80歳台の男性.S状結腸憩室炎穿孔による急性汎発性腹膜炎に対して緊急手術を行った.術後特に問題なく経過し退院となったが,術後90病日に左鼠径部の腫脹と疼痛を主訴に来院した.左鼠径部に有痛性の腫張を認め,用手還納困難であったため,鼠径ヘルニア嵌頓を疑い緊急手術を施行した.術中所見では陰嚢に達する径約4cmのヘルニア嚢を認め,嚢を開放したところ,膿汁が流出した.ヘルニア門より腸管を観察することは困難であったため,下腹部正中切開で開腹し腸管を検索した.ヘルニア嵌頓による壊死や穿孔は認めなかったため,前回の穿孔性腹膜炎の遺残膿瘍であると診断した.腹膜炎の手術時には術前に鼠径ヘルニアの存在を診断し,ヘルニア嚢内も十分に洗浄すべきであると考えられる.また鼠径ヘルニア合併の穿孔性腹膜炎の術後には鼠径ヘルニア嚢膿瘍発生の可能性も念頭に置く必要がある.