2014 年 75 巻 7 号 p. 1928-1932
症例は58歳,男性.腹痛・嘔吐を主訴に当院に来院し,回盲部大腸癌による閉塞性イレウスと診断された.術前検査で施行したCTで右肺動脈・両側大腿静脈に血栓が認められ,深部静脈血栓症・肺塞栓症と診断された.周術期に抗凝固療法を中止せざるを得ないこと,再塞栓により重症化する可能性があることから術前に下大静脈フィルターの留置を行った.手術は回盲部切除術および回腸人工肛門造設術を施行した.術後経過は良好であった.自験例を通して,大腸癌による閉塞性イレウスは,担癌状態に加え脱水をきたしていることが多く,血栓症のハイリスク症例であるという認識をすることが重要であると考えられた.今回,大腸癌に深部静脈血栓症・肺塞栓症を合併した症例に術前下大静脈フィルター留置を行い良好な結果を得た1例を経験したので若干の文献的考察を加えて報告する.