抄録
症例は73歳,女性.血痰を主訴に近医を受診した.口内炎の微出血と判断されたが,胸部CTにて前縦隔に長径3.5cm大の石灰化を伴う腫瘤を認め,精査治療目的で紹介となった.腫瘍マーカーに異常値を認めず,MRIではT1強調画像で低信号,T2で高信号の腫瘤であり,嚢胞化を伴う胸腺腫を疑い胸骨正中切開で胸腺全摘術を施行した.腫瘤は2cm大で,胸腺組織とその周囲の脂肪織に被包されており,嚢胞性の部分と充実性の部分を触知した.病理組織検査で,石灰化を伴う海綿状血管腫と診断した.腫瘍尾側には近接して1.7cm大の嚢胞を認めたが,胸腺腫は認めなかった.第9病日に軽快退院し,経過良好であった.縦隔の海綿状血管腫はまれで,本症例は画像上嚢胞や石灰化を伴い,胸腺腫との術前の鑑別が困難であった.縦隔腫瘤の診断においては,海綿状血管腫の存在も念頭に鑑別に入れる必要がある.