抄録
症例は81歳の女性.2011年11月,肝細胞癌に対してラジオ波焼灼療法(以下,RFA)を施行後,2013年2月下旬から嘔気,水様便を認めたため当院消化器内科を受診,感染性腸炎が疑われ入院となった.入院後,腸閉塞症状を呈し,腹部CTで肝彎曲部の結腸が右胸腔内に脱出し,横隔膜ヘルニア嵌頓による絞扼性イレウスと診断して緊急手術を施行した.RFA後の肝腫瘍に近接する横隔膜に約2.5cm径のヘルニア門を認め,1年以上前のRFAによる熱損傷を原因として発生した横隔膜ヘルニアと考えられた.イレウス解除術,ヘルニア修復術を施行し,術後125病日に退院となった.横隔膜直下に局在する肝腫瘍に対してRFAを施行した際には,致死的である横隔膜ヘルニアを晩期合併症として念頭に置く必要があり,本症例を若干の文献的考察を加えて報告する.