抄録
症例は64歳の女性.46歳時に甲状腺乳頭癌に対し甲状腺右葉切除,52歳時に左頸部リンパ節転移に対し残存甲状腺全摘術を施行.57歳時より肺転移を指摘され,サイロキシンによるTSH抑制療法を行いながら経過観察されていた.1カ月前より血便があり,CTを撮影したところ,直腸S状部に径5cmの腫瘤を認め,大腸内視鏡検査にて壁外からの浸潤・出血を認めた.甲状腺癌の直腸転移と診断.多発性肺転移・右副腎転移が認められたが,ともに緩徐な増大で予後が一年近く見込まれたため,出血コントロール目的に腹腔鏡補助下直腸前方切除を行った.甲状腺乳頭癌の直腸転移は稀であり,若干の文献的考察を加えて報告する.