2014 年 75 巻 8 号 p. 2258-2264
症例は64歳の男性.入院3カ月前より続く便通異常を主訴に当院内科を受診し,CT検査にてS状結腸癌膀胱浸潤,多発肝転移を指摘され,当科紹介となった.消化管閉塞症状を認めたため入院とし,入院2日後に大腸ステントを留置した.術前化学療法を施行した後,高位前方切除+膀胱部分切除を施行したが,術中膀胱浸潤部から3cm程度肛門側の部位が後腹膜に浸潤様の形態を呈しており,腫瘍の直接浸潤を疑い,周囲組織を含め切除した.病理組織学的検査にて,同部は腫瘍の浸潤ではなく,大腸ステントの肛門側断端が粘膜に接触したことにより潰瘍を形成し,漿膜面が癌浸潤様の形態を呈していたことが判明した.また切除の際に,右精管を損傷していたことも判明した.本症例では腸管屈曲部にaxial forceの強いステントを留置したことが,ステント潰瘍を起こした原因と考えられたが,ステント関連合併症の一つとして留意すべき病態と考えられた.